『離動Ⅴ』(立川清志楼監督)インタビュー

Axi(s)Rhythm:
作品制作の経緯についてお聞かせください。
立川:
『離動V(ファイブ)』となっているように、シリーズの5作目になります。
最初にこのシリーズを始めたのは、2020年頃です。パナソニックのステレオカメラ用のレンズがあって、それを買ったんです。
そのレンズで動画を撮ろうと思って買ったんですけど、実際には動画が撮れなくて、カメラでは静止画しか撮れないということが分かって。
しょうがないので、それで撮った写真を少し組み合わせて動画を作ったのが、このシリーズのきっかけです。
その後、そのレンズでも、少し工夫すれば動画が撮れるということが分かって。そこから、そのレンズで動画を撮り始めました。
ただ、ちょっと面倒くさいんですけど、それを一旦写真にして、また動画化したのがこの作品です。
Axi(s)Rhythm:
ステレオカメラというのは、どのようなものですか?
立川:
左右で少し焦点が違っていて、写真を見るときに両目で見ることで、見方によって立体的になる、いわゆるステレオ写真ですね。
それを撮るためのカメラが、デジタル時代に一時期に発売されていたんです。ステレオ写真が復活すると思ったのかどうか分からないですけど。ただ、もう廃れてしまっていて。
そのカメラ用のレンズがあって、2枚の写真が横に並んだように、微妙に焦点の違う写真を同時に二つ撮ることができるんです。
それで作品を作れないかなと思いました。
参加者A:
立川監督の作品は、いつも手法に驚かされるんですね。
僕も、自分でアニメーションを作るだけではなく、いろいろな手法を自分で開発することもあって、とても手法に興味があるんです。
立川監督のこの作品も、どうやって撮ったのかなと思っていました。
お話を聞いてみると、ステレオレンズ――少し視差の違った二つのレンズで撮っているから、こういう絵が撮れるのかなと思って。僕はステレオレンズの実物を見たことがないので分からないんですけど、そんなふうに聞いていました。
この作品は、尺が7分ほどありますが、カメラの動きが非常にゆっくりしていますよね。
それで、特別な手法で撮られた絵が、アニメーションなのか実写なのか分からないような不思議な映像として、ずっと続いていく。
カメラの動きがすごくゆっくりで、7分間のあいだに、あまり動かないんですよね。
あまり動かないからこそ、事前のアンケートにも書かせてもらったんですが、この7分間は、じっと見ている価値があるなと思ったんです。
これを早送りしてしまうと、逆に何が何だか分からない絵になってしまう。
この特別な手法で撮られた不思議な映像が、カメラのゆっくりした動きによって7分間続く。そこがミソなんだなと。これはすごいと思ったわけです。
立川:
Axi(s)Rhythmのサイトのステートメントにも書いたんですけど、ちょっとしつこいぐらい長いということが、実験映画では大事だと思っているんです。
基本的に、5分以上の作品を作るというのが自分の中にあって。ある程度じっくり見てもらうということは、常に考えています。
参加者B:
私は、カメラの知識がそれほどあるわけではないので、手法については少し疎くて、よく分からなかったんですけど。
ただ、単純に映像を見たときのファーストインプレッションとして、「ずっと見てしまう」というのが、すごく素敵だなと思いました。
映像において、「ずっと見てしまう」ということが一番大切なくらいに思っているので、そういう部分がすごく面白いなと感じました。
立川:
本当に、見てもらうということをいつも考えているんです。
いかに見てもらうか。言葉もストーリーもないけれど、見てもらうということがテーマになっているので。ありがたいです。
Axi(s)Rhythm:
リズムの作り方についてお聞きしたいのですが、作中で何度かベルが鳴りますよね。
いろいろな不確定要素がある中で、ベルのタイミングだけは、1分間隔で鳴っています。
ベルには規則性がある。一方で、亀の動きには規則性がない。
そのあたりの組み合わせについて、何か考えられていたことはありますか?
立川:
音がやはり規則的になっているんですけど、コマ撮りの音も入れているので、コマと一緒に、コマ割りを決めた段階で、ある程度決まっていたような感じですかね。
コマでリズムを出しているという感じです。
コマやベルの音などは、割と規則的です。一方で、どうにもならないのが亀の動き。
そのあたりが、作品を見ていられる要素の一つになってくるのかなと思うんですけど。
そして、結構いい具合に、飽きそうなタイミングで亀が動くんですよね(笑)。
Axi(s)Rhythm:
そうですよね(笑)。
立川:
そこが微妙なところで、飽きそうなところでアクションが起きるようにしています。
編集では、そこをいつも気にしていますね。
Axi(s)Rhythm:
要素の少ない、ミニマムな映像なので、やはり細部がどんどん気になってくる。だからこそ、画面に惹きつけられるということがあるのかなと思います。
参加者C:
だいぶ昔のことなんですけど、実写映画で、セミの羽化を固定カメラで延々と撮っている方がいました。
セミがまだ幼虫なので、枝につかまっていて。そこから背中が割れて、羽が伸びて、飛んでいくまでを延々と撮っている作品です。
その映画を撮った方は、実験映画の方ではなくて、普通の小型映画系の映画会のようなところに出品されていたんですけど、かなり異色な作品で、その作品を思い出していました。
そして当然セミですから、最後には羽が伸びて飛んでいくんですけど。
もしかしたら、この亀も飛んでいくのかなと思ったのですが(笑)。
立川:
本当に、見てもらうということをいつも考えているんです。
いかに見てもらうか。言葉もストーリーもないけれど、見てもらうということがテーマになっているので。ありがたいです。
Axi(s)Rhythm:
セミの羽化などをじっと狙って撮ると、やはり同じような効果があると思うんですけど、決定的に違うのは、背景の動きなのかなとも思います。
立川:
これ、意外に撮り方が限られてくるんですよ。
前に木がありますよね。そして、後ろに結構はっきりした背景がある。
そうじゃないと、こういうふうに画面が揺れないんです。
前と後ろの距離感がはっきり分かるような、歌舞伎の舞台みたいな感じでないと。ベタッとした感じでは、激しく動かないというか。
いろいろ撮って試してみたんですけど、こういうふうに動きになるものと、ならないものがあって。
普通に道路などを撮っても、全然動かなくて面白くないんです。
だから、セミの羽化を撮っても、多分、セミだけが少し動くだけで、背景は動かないと思います。
今年、実はセミの羽化も撮りました。このカメラではなかったですけども。
動かすとなると、被写体と背景との関係性が大きいですね。
Axi(s)Rhythm:
クロイタダシ監督からXで感想をいただいていて、「最初はカメラを上下にずらしているだけかと思ったのですが、背景が動かず、手前のものが動いた瞬間に『どういうことだ』となった」と、衝撃を受けられたみたいなんですけども。
技術的な話をすると、先ほどステレオカメラのお話もありましたが、同じシーンを撮っても角度が違う、視点が若干ずれるので、そのずれの幅だけ、デジタル処理で動かせるという感じなのでしょうか?
立川:
デジタル処理ではないですね。撮影は、三脚でずっと撮っています。
そうすると、画面を分割したものが撮れるんですよね。1枚の写真の中に、AとBという二つの画面が撮れる。
それを、ABABとずっと交互に再生していくという感じです。
Axi(s)Rhythm:
かなり誤解していました。
デジタル処理が主なのかと思っていたら、ほとんどがアナログ的な手法だったんですね。
立川:
アナログですね。
全部の写真をプリントして、それらを再撮影していって制作したものもあります。
〔2026年8月28日(金)オンラインミーティング より〕
【文責:Axi(s)Rhythm】



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