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『マウス・オブ・サッドネス』(内藤慈 監督)インタビュー

  • 8月1日
  • 読了時間: 6分

Axi(s)Rhythm:

作品制作の経緯についてお聞かせください。


内藤:

今までは「吸血鬼」とか「夢魔」とか「蛇女」とか、そういう妖怪的な存在というか、人外の者が出てくる作品を作ってきました。

『二口女(ふたくちおんな)』という妖怪がいるんですけど、ずっとそれを題材にしたいと思っていて、シナリオも書いていたんですが、なかなか具体的な制作まで至らなかったんです。

そんなときにコロナ禍がありました。別の作品も作ろうとしていたんですけど、その状況でいろいろ制限されることもあって。

逆に、その状況が『二口女』を描く企画に足りなかったものを埋めてくれたような感覚がありました。

当時は、いわゆる「コロナ映画」というか、密室で撮ったり、Zoomを使って作ったり、そういう企画性の強い作品が流行っていたんですが、そういうものとは違うアプローチで、コロナという状況を記録しつつ、『二口女』という存在を描きたいというモチベーションがあって作った作品だったと思います。


参加者A:

前半と後半で内容がガラッと変わる印象を受けて、見終わったあとに本当に「あ、こういう終わり方をするんだ」と思いました。

食事に誘うシーンとか、あの絶妙な距離感とか。

こういう作品って、どうしてもインパクトで押してしまうことが多いと思うんですけど、この作品はインパクトだけじゃなくて、そういう細かい描写もしっかり作り込みながら、なおかつインパクトもある。

本当に──この表現が合っているか分からないですけど──演出がすごく上品だな、という印象を受けました。


内藤:

上品なのがいいのかどうかは、自分でもちょっとよく分からないんですけど(笑)。

「上品」という言い方が適切かは分からないですけど、自分は、良くも悪くも完全にグロさとかエロスの方向へ振り切れないところがあるのかな、というのは今お話を聞いて思いました。


Axi(s)Rhythm:

矛盾するようなことを言うかもしれませんけど、エロでもグロでも、そういうものを扱う上での品の良さというのは、映画には必要なんじゃないかと僕は思っています。

そういう意味では、先ほどお話にあったような、ある種の品というものは、この作品には保たれていたのかなと思いました。


参加者B:

全体的にみんなマスクをしているので、「あ、そうか、コロナ禍の頃の作品なんだ」と思って見ていました。

最初に驚いたのが、主人公が食事に誘うじゃないですか。

「食事だからどこかお店に入るのかな」と思っていたら、「あ、家なんだ!」となって。

そこでまず驚いたんですが、そのあと「あ、そういうことか!」となって、すごく衝撃でした。

二口女の口の表現は、エログロ的な雰囲気を出したかったということなんでしょうか。


内藤:

二口女という題材の中でも、どの部分を描こうかなというのは考えていました。

欲望のイメージというところと、女性性の象徴というか、そういう部分は、ああいう描き方をしたほうが分かりやすいのかなと思ったところもあります。

結構、安直と言えば安直かもしれないですけど、そういう形でやりたかったので、ああいう表現になりました。


参加者B:

朔ユキ蔵の『少女、ギターを弾く』という漫画がありまして。

その中にも、女性の膣が、ある種トンネルのように、別の世界へつながる入り口として描かれている短編があったんです。

見ていて、「ああ、そういう感じなのかな」と思って、とても面白く拝見しました。


内藤:

異世界への入り口、というイメージは、多分あったと思います。


参加者B:

主人公はそこを通って、どこか別の世界へ行ってしまう、ということなんでしょうか。


内藤:

おそらくそうですね。

この現実社会からは、消えてしまった、ということなんだと思います。


参加者B:

妖怪というお話を聞いて、すごく腑に落ちました。


参加者C:

後半の、*スリットスキャンみたいなシーンに感銘を受けました。7分45秒くらい、手すりのようなところをカメラがずっと横移動していく場面です。

そこで、屋根などは動いているのに、縦の桟だけが動いていないように見えるところがあって、「これはAxi(s)Rhythm的だな」と思いました。

高速で回転する車輪のスポークが止まって見える、あの現象と同じような原理ですね。多分、そういうところを気にして見る人はあまりいないとは思うんですけど(笑)。

例えば1秒間に24コマとか30コマとか60コマとか、時間を量子化するような映像だと、ある種のモアレというか、そういう現象が出てくるんだなと思いました。


それとは別なんですが、女性が彼の部屋へ入ったときに、「男の子の部屋みたいだね」と言いますよね。

部屋の中にヒーローやロボットのフィギュアが沢山あったと思うんですが。

最初は「ああいうステレオタイプな男の子像なのかな」と思って見ていたんです。

でも、今日たまたま見たウルトラマンが「怪獣を食べる怪獣」の話だったので、なんだか妙な共通点を感じてしまいました。


内藤:

横移動のシーンというのは、多分、男女が会話しているところですよね。

あそこは確かに、「軸」と「リズム」という意味では、意図的ではないんですけど、自分の中のリズムみたいなものはすごく出ているシーンになっていると思います。

軸かどうかは分からないですけど、少なくともリズム的なものは表れている気がします。

縦の線が移動していないように見えるというか、少しふわっと浮いているような感じになっていて。

編集しながら「あ、これはええな」と思っていました。


参加者D:

今のお話とも通じるんですけど、主人公の部屋にヒーローやロボットが置いてあって、「意外とこういうものが好きなんだな」というところが面白くて、彼の人物像にすごく興味を持ちました。

そもそもZoom会議で、「こいつら、つまんねえな」と言いながら参加していない時点で、どうなんだ、というところもありつつ(笑)。

そういう、なかなかミーハーというか、面白い人物だなと思って見ていました。

あと、コロナ禍の映像というのも、当時の異様な空気を思い出しました。


内藤:

主演の彼には、知り合って間もない頃に出演してもらったんですが、あれは実際に彼の部屋なんです。

正直、ああいうものが大好きな人なんですよ(笑)。

なので、そのあたりもシナリオに組み込んだというか、自然な形で意識して取り入れました。

それが伝わっていたのであれば、それをうまく利用できた作品になったのかなと思います。



*スリットスキャン

細いスリットを通した像を連続的に記録・合成し、時間と空間を一枚の映像に融合する特殊撮影技法。

〔2026年7月18日(土)オンラインミーティング より〕


【文責:Axi(s)Rhythm】



 
 
 

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