『新しい10年間』(木澤航樹 監督)インタビュー
- 7月30日
- 読了時間: 5分

Axi(s)Rhythm:
作品制作の経緯についてお聞かせください。
木澤:
制作自体は2020年から2021年にかけて行いました。コロナ禍で在宅時間が増える中、本業であるプログラマーとしてのウェブサイト制作技術を高めようと、練習の一環として作ったのが始まりです。
また、人口データのような数値をベースに物語を作れないかという興味もありました。もともと実写のフィクション映画を作っていたのですが、少しそこから離れ、実写映画とは異なるアプローチで物語を描けないか試みた部分もあります。
政治や経済といったセンシティブな要素も含まれますが、そうした話題から一旦距離を置き、純粋に「人口と日本地図」というデータから物語を立ち上げられないかと考えました。今回の上映で改めて見直し、どこか懐かしい気持ちを感じています。
参加者A:
非常に衝撃を受けました。「これでフィルム(映画)になるのか」と驚かされましたね。
監督もおっしゃっていたように、これはまさに「プレゼンテーション」ですよね。古い人間なのでOHPシートを思い出してしまったのですが、あれがそのままフィルムになるという発想がなかったので、大変勉強になりました。
画面右上のテキストを追うことでストーリーが進んでいきますが、その物語自体も斬新で面白かったです。
事前のアンケートに「この世界線で《軸》と《リズム》は存在するのだろうか」と書かせていただいたのですが(笑)、いかがお考えでしょうか?
Axi(s)Rhythm:
かつて紙芝居というメディアがありましたが、「もし紙芝居が現代も表現媒体として残っていたら、どう進化していただろう」と考えたことがあります。
今回の『新しい10年間』のようなプレゼンテーションの様式を借りた手法が今後発展するかは分かりませんが、それをフィクションの表現媒体として採用した点は非常に面白い試みだと思います。
また、先日拝見した濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』でも、主演の二人がホワイトボードを使いながら話し合うシーンがありました。ボードで説明すること自体が表現になり得るのだと気づかされた経験があります。
結論として、もちろんこの世界線でも《軸》と《リズム》は存在するというのが私の見解です。
参加者A:
ありがとうございます。安心しました。
参加者B:
私も大きな衝撃を受けました。まるでホラーを観ているような怖さがありましたね。
最初は淡々と歴史を辿っているように見えたので、「このまま退屈な展開が続くのかな」と思ったのですが、次第に引き込まれ、最終的には恐怖すら覚えるほどでした。こうした手法で表現されていることにも正直驚きました。
これは一発ネタなのか、それとも表現の手法・展開としてさらなる可能性があるのか。非常に興味深い作品だと感じました。
木澤:
そう言っていただけて大変嬉しいです。
ただ、手法としてはこれ以上の展開をつくるのが難しく、手詰まり感もあります。私自身、今回見直してみて「一発モノ」という側面は否めないと感じていました。
日本が消失していくプロットも小松左京先生の『日本沈没』のパロディです。そうした企画性も含めて楽しんでいただけたのであれば嬉しく思います。
Axi(s)Rhythm:
2011年時点ではまだ5歳だった参加者Cさんはいかがでしたか?
参加者C:
私も最初は普通に歴史をたどっているのかと思って観ていたのですが、だんだんと自分の住んでいる場所が消えていって驚きました。現実とは異なる描写が現れることで、引き込まれていきました。
皆さんがおっしゃっていたように、プレゼンテーションという手法だからこそ独特の説得力があり、フィクションとしての表現がすごく面白いと感じました。
木澤:
現在33歳の私にとって2011年は高校生でした。
当時5歳だった若い世代の方に観ていただけたことがとても嬉しいですし、自分とは異なる捉え方や感覚が垣間見えて、とても不思議であり嬉しいような感覚を抱きました。
参加者D:
先ほど監督が「ウェブサイト制作の練習から生まれた」とおっしゃっていて、すごく納得がいきました。
映像作品というよりは、インスタレーションのような展示空間で流れている作品という印象を受けていたからです。
最初はスマホで鑑賞し始めたのですが、途中で「これは文字が読めない!」となってしまい(笑)。
ただ、グラフの推移とともに日本が沈没していくので、超早送りで観たら画面全体の人口動態の変化がダイナミックに分かりそうだと思いました。
九州が沈没したことでどこへ人が流れているのかなど、より俯瞰して捉えると面白い観方になりそうです。
参加者E:
私は1回目の視聴時、右上の文字を読むのに必死でグラフまで頭が回らなかったので、2回目は早送りで観てみました。
すると、下のグラフの右半分が途絶え、人口が突然半減したことがよく分かりました。……早送り禁止だったのに、すみません(笑)。
Axi(s)Rhythm:
それは目から鱗ですね。早送りをすることで、むしろ別の事実が浮かび上がってくる。
あえてAxi(s)Rhythmのルールに反したほうが作品構造がよく解かるというのが面白いですね(笑)。
木澤:
先ほどインスタレーションというお話がありましたが、実は過去に展示を行ったこともあります。
ただ、もともと展示用として制作していなかったため、「文字が見づらい」という課題は残りました。やはりPC環境での視聴が最も適しているのだと思います。
また、グラフなどのデータを映像として見せる場合、「時間」の扱いが非常に難しいと感じます。どのようなスピードに設定すればいいか、大変難しいです。
次回こうした試みをする機会があれば、グラフを物語に取り入れる時は「時間」、そして「何を見せるのか」を改めて捉え直す必要がありそうです。
〔2026年7月18日(土)オンラインミーティング より〕
【文責:Axi(s)Rhythm】



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