『誰もが青春を謳歌できるわけじゃない』(長櫓生真監督)インタビュー&感想
- Keiji Takenaka
- 9月6日
- 読了時間: 4分

Axi(s)Rhythm:
作品制作の経緯についてお聞かせください。
長櫓:
仕事で覚えた CG で――合間の時間にはキャラクターモデリングを独学でやっていまして、その流れで、実験的に弓道を題材にしたアニメを作り始めました。これは僕が高校の時に弓道部に所属していたこともあって、弓道のコミュニティの中でいくつか作品を発表してきました。その過程で生まれたのが今回の一本です。内容的にも、弓道に関わる人だけでなく、より広い方々にも観ていただきたいと思い、近年はさまざまな上映会やコンペティションにも出品するようになりました。
参加者A:
この作品は以前から何度か観る機会があったのですが、私は学生時代に部活動の経験がなく、特に弓道のような珍しい部活についてはあまり知識がありませんでした。だからこそ、とても新鮮に映りました。
また、車椅子の方に対して、当人だけでなく周囲の人たちも工夫をしながら一緒に取り組んでいる姿が描かれていて、「これも青春のひとつだな」と感じました。あと弓道の障害のある人に対する取り組み――周囲の人たちが積極的に関わっている様子を強く感じました。
長櫓:
ただ、車椅子を使っている人であっても、そうでない人であっても、「自分は青春を本当に謳歌した」と胸を張って言える人はそう多くないと思うんです。なかなか思い通りにはいかない中で、みんなで何かに取り組んで――後で思いだしてみたら「あれが青春だったな」と思える、そんなものじゃないでしょうか。
参加者B:
カメラがいろいろと動いているんですけど、不自然さがなく、自由な感じで動いているのが印象的でした。最初から最後まで綺麗に流れていて、シンプルに「うまいな」と感じました。
長櫓:
まず、ありがとうございます。そうですね。これはアニメではあるんですけど、僕自身はもともとアニメを多く作ってきたわけではなく、仕事でも普通にカメラを回して実写を撮る方の人間なんです。
3Dで作る場合も、やはりセットを組んでキャラクターを立たせてカメラを置く――そういう実写的な作り方をしています。なので今回も、最初から実写を撮るつもりで構成して作り始めた、という感じですね。
参加者C:
テーマ的に主人公は肢体不自由という設定ですが、そのような方でも胸を張って、いろんなことに挑戦して頑張ってほしいな、と僕も思います。僕自身は五体満足ではありますが、それでも「普通の人ができることが自分にはできない」ということがあって、劣等感を抱いてぐじぐじしていた時代もありました。けれど、そうではなく、自分の得意なことを頑張って続けていけばいいんだな、と思わせてくれる。そういうところにすごく共感しました。
また、先ほどカメラワークの話も出ていましたが、この作品の映像はまさに実写で手にカメラを持って撮影しているような動きですよね。3Dになると、手持ちだけでなくクレーンカメラやドローンのような自由な動きも可能になりますが、その中で実際にカメラを構えて撮っているかのように、とても上手に表現されていると感じました。
さらに、一つひとつのカットがとても丁寧に作られていて、動きも豊かです。そうした丁寧な作り方にも非常に好感が持てました。この作品、とても好きです。
長櫓:
ただただ、ありがとうございます。それだけです。
参加者D:
団体戦については、個人競技を団体戦として行う意義は何だろう、と改めて作品を観ながら考えさせられました。団体戦があるからこそ、こうしたチャンスが巡ってくるのかもしれないな、とも思いました
また、作品の中で途中アーチェリーとの比較が描かれていましたが、一般的にアーチェリーと弓道がある中で、弓道を選び、続けていく人たちはどんなところにモチベーションを見出しているのだろう、と主人公を見ながら考えました。
長櫓:
そうですね。団体戦に関しては、柔道や剣道でもそうですが、やはり「学校対学校」という形で結束して戦うことで連帯感が生まれますし、その分多くの人が試合に出られるというメリットもあります。ですから、弓道や他の武道においても、団体戦を重視する方は多いと思います。
アーチェリーとの違いについてですが、アーチェリーは純粋に「得点競技」なんですね。一方で弓道は、見ていただければわかる通り「作法」というものが重視されます。僕らとしてはその作法に惹かれるわけですが、逆に「作法ができなければ弓道ではない」という考え方もあります。そのため、車椅子の方々が取り組む場合に「これは弓道と言えるのか」という問題が出てきてしまうわけです。
一方で、アーチェリーはすでにパラ競技としてしっかり確立されています。だからこそ、自分としてはアーチェリーではなく、弓道をベースにした作品を作ろうと考えました。
〔2025年7月27日(日)オンラインミーティング より〕
【文責:Axi(s)Rhythm】
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