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『響想詩 彩と空の響影 壱』(山里ぽん太 監督)インタビュー&感想

  • 執筆者の写真: Keiji Takenaka
    Keiji Takenaka
  • 10月16日
  • 読了時間: 4分

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Axi(s)Rhythm:

作品制作の経緯についてお聞かせください。


山里:

昨年のAxi(s)Rhythmで『空の響影 四』という作品を上映していただいたのですが、そのときに「水彩で作ってみたらどうですか」という感想をいただきました。そこで実際に試してみようと思い、制作したのが今回の作品です。

3Dで水彩を表現するにあたって、水彩にはさまざまな技法があるのですが、僕自身は素人なので専門的な名前はよく分かりませんが、体感的なものを3Dで試行錯誤しながら再現してみました。

今回の作品で取り入れたのは、まず紙の質感、それからボカシ、色むら、さらに筆で塗っていくような表現です。これらを組み合わせて作ったのが本作です。できることとできないことはどうしてもありますが、その中で工夫し、なんとかでっち上げたのがこのフィルムです。


参加者A:

紙の質感がとてもよく表現されていて、さらに山里監督の描きたい世界観がより形になったのかなと思いました。とても素敵で、楽しみながら拝見しました。


山里:

嬉しい限りです。去年より悪くなったと言われなくて良かったです(笑)


参加者B:

これまでの山里監督の作品は3DCGらしいという印象が強かったのですが、今回は物体にテクスチャーが貼られていて、和紙のような質感になっていて驚きました。

あと個人的には、背景でゆっくりとスクロールしている紙の質感がとても好きです。また、紙飛行機の位置が、軌跡の青紫色のラインに沿って時間とともに上へ上がっていく表現も印象的で気に入りました。


山里:

ありがとうございます。やっぱり自分で作った作品を見ていると、「ここはうまくできていないな」「ここはうまくできたな」と、どうしてもそういう点ばかりが気になってしまいます。ですので、その部分を指摘されなくてよかったなと思いました。


参加者C:

手書きでやるとしたらこう 細長いこう あの紙を右から左へ引っ張りながら そこへあの 次々に湧いてくるものを置き換えて、引っ張っていくことになると思うんですね。じゃあその飛行機雲が出てくるところは、背景の紙のところにこうシューとカッターナイフでスリットを作って、そっから あの 右から左へ 引っ張っていくんだろうなと思うんですけど。軌跡が湧いてくるところに線みたいなものが感じられるじゃないですか。あのその紙飛行機のから出てくる飛行機雲が広がっていく、滝のように湧いてくる、その辺が、引っ張っていくように見えるんですよ、私には。そしてきれいに湧いてくる お花とかはスムースなんだけれども、なぜ紙飛行機の後ろのところと紙飛行機のところの、縦の、湧いてくるところは何とかならなかったのか。つまり、一旦半透明になってから、飛行機雲が湧いてくるというような描写にはできなかったのか、ということです。


山里:

3Dなので本来は何でもできるんですけれど、あえて半透明の処理などではなく、ペーパーを切り貼りしたような質感にしたい、という思いがありました。紙を切って貼るような感覚を出したかったんだと思います。


参加者C:

花がポンポンと出てくるところは、昔ながらの切り紙アニメの感触が出ていたと思います。


山里:

正直に申し上げると、花が出てくるシーンのアニメーションは、もう少し工夫したかった部分です。どうしてもワンパターンになってしまったので、本来ならもっと時間をかけて、新しいアニメーション手法を自分で開発して取り入れたかったですね。機会があれば、新しいバージョンとして作り直すかもしれません。


参加者D:

皆さんがアニメの作り方を細かく語っていて「みんな詳しいな」と思いながら聞いていたのですが、私は完全に手描きだと思って観ていて、すっかり騙されていました。どちらにしても構わないのですが、私が特に感じたのは、監督の作品はリズムがとても良いということです。

ご自身で作られたものだと思いますが美しい音楽が流れていることに加えて、映像の進む速度や、余白の美しさも印象的でした。映像が展開して画面がどんどん埋まっていくのではなく、余白が残されていることで心地よさが生まれていると感じました。

だからこそ「これは手で描いたのかな」と思い、最終的には絵巻物のような印象を強く受けました。とても面白かったです。


山里:

そこは、実は僕がいつも大切にしているキーポイントなんです。僕はXやnoteにも「アニメーションを作る」ではなく「絵を作る」と書いています。自分の表現は「絵を作ること」なんです。やっぱり絵を作りたい。画面の中に手描きのような絵を置きたい。そのためにはバランスや配置を考えなければならないし、絵として成立したときに何を表現するのかも意識しなければなりません。

さらに、アニメーションとして動かすときにも「どう動かすか」が重要になります。僕自身の美意識や感覚で、気持ちのいい動きをさせたい。スピードやタイミングを細かく調整しながら、3Dですので24分の1秒単位でしかできませんが、その中でできる限り心地よく動くように心がけています。そこを汲み取っていただけて、とても嬉しいです。

〔2025年8月22日(金)オンラインミーティング より〕


【文責:Axi(s)Rhythm】

 
 
 

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