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『particle』(木澤航樹監督)インタビュー&感想


――『particle』を制作されたきっかけ、経緯について教えてください。


木澤:

この作品を制作したきっかけは、二つの理由があります。まず、私はシステムエンジニアでウェブサイトを制作していますが、プログラミングやウェブデザインの技術が商業レベルとは違う、映像的なクリエイティビティにならないかと思ったことです。それから、もう一つは私自身が「男とは何か」という疑問、興味から、男性に共通する感覚について掘り下げたいと考えたことから、射精をテーマにした作品を作ってみました。


――鑑賞された皆さんに、作品を観て思い浮かんだ言葉、感想などをお聴きしていきます。


感想1:

この作品は、言葉では表現しづらい妄想の映像のようで、コメディの要素も感じながら、意味があるようでいても映像自体は抽象的で、ぼやけている感じがして、それが不思議で面白いんです。意味性を持たせようとするほど、映像と離れていくような感じがしました。演出が実に巧みで、緻密に考えられているなとも感じました。


感想2:

「男性にしか理解できない感覚だな」と思いながら、興味深く観ていました。可視化される過程がなんとなく作業的に感じられ、それを作業として認識するということ自体が男性的な特性を反映しているのかなと思いました。自分自身の男性性を疑う時に射精にのみを基にするのが、男性的だと思いました。作品の最後の方では、海外での生活に関する言及もありましたが、それが日本社会における男性にとっての不自由さを考えて、更に奥深さを感じられました。それらも全部含めて男性的な感じがするとは思いますね。


感想3:

ラストの切れ味がすごく印象的でしたね。前半はいろんな人の撮影パターンが面白くて、ラストが突然カットされて、そこがとても面白かったんです。前半の静かな流れから一転して、最後でリズムが爆発的に生まれる感じがありました。そのカットのタイミングには何か意図があったのかなと思って、知りたくなりました。


感想4:

この作品を観て、あの数値を打ち込んで作ったものを見て、自分のこの瞬間、あの射精の瞬間を本当に可視化できたなという風に、皆さんが納得したのかな、っていうのが、なんかすごく気になったんですよね。これでちゃんと可視化って納得したんだとしたら、なんかすごく面白いというか。自分の感情や感覚をかなり客観視して数値に置き換えることができる時点で、何だかすごく男性的というか、それ自体がすごく男性っぽいっていうか。これで本当に可視化できたということで納得をしたのであれば、CEOの方とかすごいじゃないですか。あれを見て「こういう感じなんだよ」みたいに納得とかされたんだったら、なんかすごいなと思って。映像作品という以上にこの粒子の動きみたいなもので可視化できたという風に思えるのだったら、これは逆にすごいコミュニケーションツールだなと思いました。


感想5:

システムエンジニア(SE)さんなんですね。私自身も昔SEとして働いていました。状況は当時と異なると思いますが、ビジュアルで何かを表現したいという気持ちには共感できました。作品に関して、自分の感覚を粒子の形や動き、そして数値の変化を通じて表現しようとする発想はとても新鮮でした。また、喜びの感覚の表現にバリエーションが多様であることも印象的でした。これに関連して、自分がアニメーションを作る際の感覚の表現が、ステレオタイプや紋切り型になっているのではないかと反省する機会にもなりました。作品を通じて、自分の表現方法を見つめ直す機会をいただいたと感じています。


感想6:

私はこの映像を見て、とても変だと感じました。パーティクルで表現すること自体は何となく想像がつくのですが、友達と話している音声を流しながらそれを見せる形式が非常に面白く、興味深いと思いました。

単純にAさん、Bさん、Cさんの射精の瞬間がこのような感じだと見せることも可能ですが、それを友達に説明しながら見せるという変わった形式が取られているのが、とてもユニークだと感じました。直ぐにこれだ!という映像を出すのも良いですが、例えば操作する人と「もう少し粒子感を強くして」などとやり取りしながら完成に向かっていく見せ方も面白いかもしれないと感じました。


感想7:

まず最初に『(クオリア)』という言葉が思い浮かびました――クオリアは括弧に入れてください(笑) この作品は、人はそれぞれ異なる感性や感覚を持っていますが、普段はみんな同じようなものだと思い込んで平穏に過ごしています。しかし、本当は違うのです。もしその違いを本気で表現しようとするならば、自分自身で最初からプログラムを組むような作業が必要になります。そうしないと、違いを十分に表現することはできないでしょう。この作品は、パラメーターを動かすことが可能ですが。


――いろいろ感想をいただきましたが、いかがでしょうか?


木澤:

感覚を可視化するという作業自体が男性的だという視点は、これまであまり考えたことがありませんでした。ビジュアルで射精が表現できているのか、という話もありましたね。やっぱり、こういったシステムでも表現しきれない感覚がやはりあると思っています。


――友人は、会話の途中ではちょっと主人公の話にちょっと納得していないような感じがしますね。


木澤:

やっぱり、単なる粒子の爆発だけでは表現できない感覚があると思います。その時の精神状態によっても、感覚は違うと思います。


――主人公自身は、あのシステムを開発して「この方法はいける」と信じているようにも思えますが。


木澤:

あの主人公の声は僕が担当して‪いて、実際、主人公と僕は近しいところがあります。自分の感覚が他の人も同じように感じているのかどうか疑問なところがあって、また「射精は気持ちいい」と言われていますが、それが本当に気持ちいいのかどうか、自分自身でも疑問に感じるところがあって。そういった思いを、あの主人公に託しました。


――ラストの切れ味について触れられた方もいました。2人はちょっと分かり合えた部分が出たのかな、と思うのですが。


木澤:

分かり合えたかどうか、というところまではあまり考えないで作っていたのですが、男性という性を巡ってちょっとしたコンフリクト(衝突)がありつつ、その中で何となく分かり合えていく、仲を取り戻していくみたいなのは、意識をしていました。


〔2024年6月7日(金)オンライン交流会より〕

【文責:Axi(s)Rhythm】

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