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『視力検査(仮)』(ひろさわ監督)インタビュー&感想

  • 執筆者の写真: Keiji Takenaka
    Keiji Takenaka
  • 5月9日
  • 読了時間: 6分


――『視力検査(仮)』を制作されたきっかけ、経緯について教えてください。


今回のアクシリズム(vol.0-prototype)が作品を募集した直後に、「よし、このイベントに"合わせた"作品を、とにかく間に合わせよう」と思い立ち急遽制作した作品でして(応募期間は2024年4月22日から5月13日)、制作期間が2ヶ月なかったんじゃないかなと思います。

だから多分、今回の上映会で唯一の未完成作品だと思いますよ。

〔ひろさわ後註:過去のスケジュールを調べてみたら実際は2週間弱でした〕

作品は、画面全体に出てくる文字のパートと映像を分けるっていう構成になっています。

『裁かるゝジャンヌ』(監督:カール・ドライヤー)や『イントレランス』(監督:D・W・グリフィス)もそうですけど、あのようなサイレント映画の構成が結構インパクトあるなと。

文字が1秒、映像が2秒なのは――2秒くらいなら全力疾走できるというか、1秒24コマでやっても48枚描けばいいし、まあ今回はだいたい1秒8コマで撮っていて、16枚描けばアニメになるなと。

現在長編を作ってるんですけど、その間にもなんかネタが色々溜まってきて、それをなんとか 整理したいなと思って、とにかく描きたいものを2秒で描いてみる、ということを行いました。


――鑑賞された皆さんに、作品を観て思い浮かんだ言葉、感想などをお聴きしていきます。


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感想1:

ユーモアに脱帽して、すごく笑ってしまいました。画面の左右や上下といった方向性について、深読みすれば色々な解釈が可能だと思います。

例えば、画面の左に向かって進むことや、左からの光源は夢や希望を表すことが多い、右側にあると過去を感じさせる、というような論文を以前読んだことがあり、それを思い出しながら鑑賞していました。

方向や位置には確かに意味があると思いますが、何よりもユーモアやセンスが際立っていて、とても印象的でした。

シーンはどれも短いものばかりですが、その絶妙な脱力感や、時間切れをオチにするアイディアには、本当に楽しませてもらいました。


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感想2:

面白い作品だとは思うのですが、その面白さを言葉で説明するのは少し大変ですね。

「どんな話ですか?」と聞かれたら、視力検査が順番に出てくるというくらいしか説明できないんです。

純粋に、映像の楽しさ、面白さが感じられる作品だなと思いました。


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感想3:

『視力検査(仮)』というタイトルだったので、正直、本編が別にあるのかなと少し期待していました。

ところが、見終わった後は「視力に自信がなくなる作品だな」と感じました。

最初はCマークを一生懸命探していたのですが、途中の壁ドンのシーンからは全くリングが見えなくなってしまって…。

4回くらい繰り返し観ましたが、結局どこにもリングを見つけられませんでした。

「視力検査」と名がついている限り、どこかにリングがあるはずだと思っていたのですが…。

ちょっと自信がなくなる作品でした。


ひろさわ:

途中でCはなくなります。


(感想続き)

そうなんですね。視力検査というより動体視力の検査に近いのかな、と思いました。


ひろさわ:

あれ以上早くすると、絶対見れないなと思ってます(笑)


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感想4:

ちなみに完成するとどれくらいの長さになる想定ですか?


ひろさわ:

3分ぐらいになるんじゃないかなと考えています。


(感想続き)

個人的には、あと3、4倍くらいのボリュームを期待しています。短編アニメのオムニバスのような感じで、次に何が出てくるんだろうと思いながら観ていました。

ただ、左右の壁ドンしているカップルが続くのかと思いきや、そこで終わってしまい「え、次は?」と気になりました。

他にも、例えばケモノのカップルやロボットなど、次はどんな展開があるのかと期待するところで、 無情な締め切りがやってくるという。

リアルタイムで作ってる熱さを感じるというか、本当に生きたアニメができている感じです。

ぜひ完成させてください。


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感想5:

枝葉の部分に注目してしまって恐縮なのですが、ロボットのデザインがすごく刺さりまして、私の分析ではガンダム、トランスフォーマー、レイズナー、そしてバイファムの要素を感じました。


ひろさわ:

バーニアはバイファムのスリング・パニアーだと思います。スカート部分は多分 ボトムズで…。

自分が見ていたものを、記憶だけで描いたものです。


(感想続き)

自分の琴線に触れるものでした。

胴体の表面は車のフロントガラスのような意匠があったり。


ひろさわ:

ガラス張りのコクピットが好きだからなんです。

〔ひろさわ後註:ダンバインのオープニングのこれとか(00:57)、https://youtu.be/mLjTe_lvnsI?si=Rp2-IVbLKTEig5Zn&t=57

ガラス張りではないですが、Dr.スランプのキャラメルマン1号とかですね。〕

付け加えますと、左から自動車が来て、右からロボットが飛んでくるシーンは、洋画と日本のアニメの進行方向の違いを表わしています。

富野監督のアニメでは、原則としてモノが右から左へと進んで行きます。

〔ひろさわ後註:機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)では、一般的な「北が上になった世界地図」上で右から左に進みたいがために、北米から南米へは直接進まない(地球を1周しないといけない)という構成をとっていますね。

また、機動戦士ガンダム第1話では、会話線の原則を破ってまで、右から左へすすむという原則を優先させています(そのせいで、サイド7の全体像はわかりにい)。

さらに、右方向に逃げた避難民は助からない、という演出を行っています。未来をつかむためには、(ホワイトベースのある)左に進まなければならない。

ただこの原則も、映画の『イデオン 発動編』や『逆襲のシャア』の終わりでは反転しますね。

イデオン終盤では、画面の右で大ボスのガンドロワが、左からくるイデオンをお出迎えしてますし、『逆襲のシャア』では、左側の月から、右側の地球へ向かう(帰る)ことになります。〕


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感想6:

キーワードとしましては「乱視」とさせていただきました。

ごめんなさい、全然乱視でみれなくって…。


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――画面内における向きについて。ひろさわ監督はかなりこだわりを持たれていると思います。


それはもちろん考えてます。

宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』を最近見たんですけれども最初の方、主人公が右側にいるんですよね。

海外の作品やと主人公が左側にいることが多い。

ニナ・メンケス監督の『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』を観ましたが、「男が→見る→女」、”Man gazes Woman.”だったかな。

男(主語・主観・subject)が左に、女(目的語・客観・object)が右に、その間に動詞という英語の構造があって、日本語やとやっぱり縦書きの右から左へっていう形になっていて。

日本の映画って海外では主観と客観が逆転して見られてるんかなと。


――いろいろな感想をいただきましたが、いかがでしょうか?


スピードが速くてちょっと申し訳なかったかなと思います。

何が最適なスピードがというのも悩みまして、作りながら映像は全部2秒にしたんですが、あと0.5秒欲しいなとかいうところもいっぱいありました。



〔2024年8月7日(水)オンラインミーティング より〕

【文責:Axi(s)Rhythm】

 
 
 

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