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『XYZ』(石井善成監督)インタビュー&感想

  • 執筆者の写真: Keiji Takenaka
    Keiji Takenaka
  • 5月6日
  • 読了時間: 5分



――『XYZ』を制作されたきっかけ、経緯について教えてください。


石井:

去年の8月、ちょうど今頃ですね、日本アニメーション協会の自主上映会「イントゥアニメーション8」というオムニバス企画に15秒のアニメーション作品を出展しました。その作品を、今回のために少し長く再編集したものが今回の作品になります。

その時に与えられたテーマが「8」を横向きにした「無限(∞)」だったんです。これに基づいて、宇宙の質量保存の法則や座標といった要素をモチーフにしました。自然界では、決められた質量の中でしか物事は変化できません。つまり、何かを作り変えたり、テクノロジーを加えたりしても、ゼロから物を生み出すことはできず、必ず決められた質量の中で変化が起こるんです。それを立方体の等積変形という形で表現しました。

実は、これと似たようなコンセプトの作品を、僕は大学の卒業制作として2012年に制作していました。ビジュアルもほぼ同じですが、作家として成長した現在の自分の技術を用いて、リメイクというか、纏い直したという感じです。


――鑑賞された皆さんに、作品を観て思い浮かんだ言葉、感想などをお聴きしていきます。


感想1

最近、若い方々の作品を見ていて感じたことがあります。作品制作の際に、最初からしっかりとしたイメージを作り上げ、それに基づいてコツコツと進めていくのか、それとも現実の映像をまず作り、その映像を見ながら追加や修正を重ねていくのか。今回の作品はどのようなプロセスで制作されているのか、気になりました。最初に立方体のような画面の構成だけを決めて、あとは少しずつ制作を進めながら、その都度結果を確認し、足し引きを繰り返しながら作り上げていくのではないか、と感じたのですが?


石井:

このコマ撮りアニメーションは「置き換え」という手法を用いています。一般的なコマ撮りアニメーションでは、人形を少しずつ動かしながら撮影を進めるため、コンテやタイムシートがなくても、ある程度アドリブで進行することが可能です。しかし、「置き換え」では、まずすべての人形やモデルを作り上げ、それらを一気に入れ替えながら撮影を行います。そのため、制作の際には、まず使う予定の形をすべて揃えてから撮影を始めます。したがって、作りながら追加するのではなく、計画に基づいて立体を造形し、それを撮影していくという手法になります。


感想2

キーワードは「5の3乗」です。5×5×5の立方体、つまり一辺1cmで作られたのかなと思ったのですが、あらすじに「125立方センチメートル」と記載されていたので、改めて考え直しました。もう一度見直してみたところ、画面上に質量のない時間は存在していないことに気づきました。それはまさに万物流転。また上から下へと移動する際にスライスが空中に飛んでいるのがとても不思議でした。どうやって制作されたのかと思いつつも、その謎はあえて解き明かさないままにしておきたいと思います。


感想3

先ほど、あの作品がどのように作られたのかをお聞きして、「宇宙が同じ質量から成り立っている」という摂理に基づいて制作されたと知り、なるほどと納得しました。作品は非常にシンプルであるがゆえに、さまざまな想像を掻き立てられました。特に、ループが繰り返されているという点が印象的で、観ている間に多くのことを考えさせられました。人間の営みや歴史といった繰り返される事象について、深く考えるきっかけとなったのです。

また、この作品を観ていると、ふと昔観たカナダの映画『CUBE』を思い出しました。立方体の中で繰り返される状況に似た感じがあり、「ここから抜け出したいけれど抜け出せない」という感覚がありました。それが良いものか悪いものかはわからないなと思いながら、それも含めて非常に考えさせられる作品でした。とても面白く拝見しました。


感想4

非常に独特な浮遊感と無機質な雰囲気を感じました。これまで私自身も「置き換え」によるアニメーションを制作した経験があるため興味深く観ていましたが、特にキューブが空間上に浮かんでいるように見える描写が、浮遊感を効果的に表現していると感じました。また、タイトルが『XYZ』であることから、3D空間内でのアニメーションだと思って観ていましたが、お話しの中で「宇宙」というキーワードが登場して、さらに深い意味が込められているのだと気づき、より考えさせられました。


感想5

多分、デジタル技術でも制作できてしまうと思えるのですが、逆にコマ撮りならではの美しさが特に際立っていて、それは影の存在なのではと感じました。基本的には光が主に右方向から差し込み、左方向に影ができていますが、シーンによって影の変化で様々な表情が現れていて、面白く拝見しました。


――イントゥアニメーションの15秒アニメーションとして公開されていましたが、今回28秒の作品にされたのは?


石井:

1つの作品としてちょっと短いなというところで、30秒前後にしたいなと制作し、今回のロングバージョンになりました。


――音についてはどのような点に配慮されましたか?


石井:

BGMはフリーの音源を使用したんですが、選ぶ際には神秘的な雰囲気と、少しサイバーな感じで、グリッド空間を想起させるものを厳選しました。


――この一連の立方体の動きや展開について、どのように構成されたのでしょうか?


卒業制作の時もそうだったんですが、コマ撮りアニメやストップモーションについて話すときに、よく「手作り感がある」「温かみがある」という言葉が使われるんです。でも、私はそれについては作家性や作品性に依存していると思っています。

今回の「アクシリズム」のコンセプト、映像からストーリーを可能な限り排除し、映像そのものの本質を楽しむというところに通じているのかなとも思いますが――無機質なコマ撮りがあってもいいんじゃないかなと考えたのが一つです。

また、3次元空間、つまりXYZの3つの軸をモチーフにしたときに、重力を感じさせないコマ撮りをやりたいという思いがありました。壁が地面のようだったり、天井が地面のように感じられたりする表現を最低でも1つは入れたいと思っていました。そのため、縦横無尽な動きができるように工夫をしました。カメラは中心に据えて、上下左右それぞれが対称になるように気を使いました。


〔2024年8月7日(水)オンラインミーティング より〕

【文責:Axi(s)Rhythm】

 
 
 

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