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『変差Ⅱ』(立川清志楼監督)インタビュー&感想


――『変差Ⅱ』を制作されたきっかけ、経緯について教えてください。


立川:

4年前から『第一次三カ年計画』というのを始めまして。今は『第二次三カ年計画』を今年の1月から始めていますが、それは毎月5本の映像作品を作るということで進行中です。その中の1本が今回の『変差Ⅱ』です。その5本もバラエティに富んだ形で作ろうと思っていますので、色々なパターンがあって。今回の作品は定点で撮影した映像です。


――撮影場所は新宿アルタ前ですね。この場所を選ばれたというのは…?


立川:

その時は新宿に行く用事があって、色々撮影しながら歩いてて。ちょうど人が多かったのでポンとカメラを置きました。ちょっとなんか気になるところ、面白そうだなっていうところにとりあえずカメラを置いて、長回しするっていうのが、私の基本的な形です。


――鑑賞された皆さんに、作品を観て思い浮かんだ言葉、感想などをお聴きしていきます。


感想1:

大変面白く拝見しました。色々な考えを呼び起こされました。ただ言葉にするのが難しいんですけど、静止しているものだけが残り、動いているものは時の流れの中で変化し、霧のように消えていく不安定さを感じました。逆に、変わらずに残っているものが目につくんですよね。生き物や人間も同じで、どんどん変わっていく中で、何が変わらないのか考えさせられました。町の景色でさえ数年後には全く違う姿になるかもしれないと思います。それに、音楽がとても映像とマッチしていて、とても心地よく感じました。昼も夜も通して24時間の様子を見てみたい、そんな風に思いました。


感想2:

まさに早送り不可だなと思います。今回の上映会の趣旨でしたよね。この作品を早送りしていたら楽しめなかったというか、そのまま見ているからこそ、だんだんと自分が変な世界に入り込んでいて、「いつの間にこうなっちゃったの?」みたいな不可解な世界に居る感触がとても面白かったです。人物がむにゅーんってなっちゃうところが非常に気持ちが良かったです。


感想3:

言葉で表現するなら「時空のゆがみ」ですね。同じ時間軸に存在する人々なのに、動いている人だけが奇妙に歪んでいく不思議な感覚がありました。特に、放置されたベビーカーが2つあって、その結末が気になりました。「べビーカーの親はどこに行ったのか」という…。


感想4:

時間、空間などをテーマにされていると思うんですけど、実は、以前にギャラリーやビエンナーレで発表されていた作品に似たものを見つけたことがあって、その作家の方はかなり前に発表されていたんです。ただ、オンラインではあまり目にすることがなくて、ニッチなファンの間でしか知られていないと思います。私は京都のギャラリーでその作品を見たんですが、2019年ごろだったかな。ということで作品のバックグラウンドについてお伺いしたいと思いました。表層的に近しいのと、作品のコンセプトが全く違うっていうことはよくあることなので。音については、作品の不気味さが出ててすごく面白いなと思って見てました。


感想5:

私が3Dで制作するならどうしようかと思いました。制作にはかなりの困難が伴うだろうと。特に興味深かったのは、色が次第に増えていく描写です。最初はモノクロの中に唯一赤があったと思うんですが、徐々にその数が増えていくんですね。この展開には深い意味が含まれているのかな、と考えさせられました。普段、私はこのような作品を手がけることはありませんが、非常に興味深い体験でした。


感想6:

7分があっという間で、楽しく拝見させていただきました。この新宿アルタ前にはよく来るんですけど、人混みがすごくて賑やかで、すごく好きな場所なんですよ。でも、この映像を見てると、途中で人が消えたりするんですよね。そういう時、人が0人になること、生物がいなくなってしまうことを期待してしまう自分がいて。誰もいないみたいな状況が私はすごく嫌で悲しいと思ってたんですけど、この場所から、誰も人がいなくなってしまうことに期待してるっていうこの感覚は不思議だなと思って見ていました。


感想7:

私も楽しく見ました。キーワードとしては『スパイスの旨味』。最初は設定を理解するところから始まりました。「これはこういうタイプのスパイスなんだな」という感じですね。眺めているうちに、その旨味が蓄積してきて、理解が超える気持ちよさで盛り上がる時もあれば、気持ち悪くなる感じもありました。


感想8:

連想したキーワードは「(猫)波」です。作品を見ていると、あの看板のところの猫が気になってしまい、本来見なければいけない全体を見るはずが、つい看板の猫ばかりを気にしてしまうんですよね。その感覚が何というか、波打つようなものでしょうか。左右に移動する人々と、こちらに向かってくる人々の波打ち方が異なる感じがします。こちらに向かってくる人は不定形でブロブのようにぶよっとした感じで波打ち、横に移動する人は波型を描くように感じますね。そんな感じです。

私としては、ちょっと古い人間なので、あの『タイムボカン』や『テッカマン』のオープニングで使われていたあのスリットスキャンのような映像が思い浮かびました。


――いろいろ感想をいただきましたが、いかがでしょうか?


立川:

皆さん、本当にありがとうございます。やはり、作品を制作する際には様々な視点で見ていただきたいという思いがあります。自分が言いたいことなどは入れず、よりシステマティックに制作しています。具体的な制作方法は、画面を100のレイヤーに分割し、時間軸をずらしていくことです。この前に制作した『変差』という作品は縦方向に切っていきましたが、今回は横方向に切り分けています。このように以前の作品を少しずつ変化させて、また作品を新たに作っていくというスタイルで、その一環として本作も制作しました。


――音に対しての工夫、こだわりは?


立川:

最初の頃は、その場で録音したものを加工していましたが、最近はシンセサイザーを使ったり――この作品については iPad の無料のアプリを使用しました。それでパッと作って、スピードを変えたりして作品に合うように調整していくという形ですね。


――自然な音から切り替えられたのは?


立川:

何かパターンが同じになってくるので。変化を持たせるために、そういう風になってきているのかと。


〔2024年6月7日(金)オンライン交流会より〕

【文責:Axi(s)Rhythm】

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