『響想詩 灯の響影 四』(山里ぽん太監督)インタビュー&感想
- Keiji Takenaka
- 9月6日
- 読了時間: 5分

Axi(s)Rhythm:
作品制作の経緯についてお聞かせください。
山里:
昔に制作した『VOCALISE(ヴォカリーズ)』というフィルムを、もう一度作り直してみたいという思いがありました。題材にしているのはラフマニノフの『ヴォカリーズ』です。以前はピアノソロの音源だけを使っていましたが、今回は声の音源を購入し、声で演奏されたものを用いて新たに作品を作ってみたいと思ったんです。
制作にあたり、最初は完全なリメイクにしようと考えていました。ただ、前作で描いていた「下駄」はやめて「灯」だけにしようと変更しました。また、階段を上っていく場面も、途中で「これはやめよう」と判断して省略しました。そのため、前のフィルムをご覧になった方はご存じかと思いますが、ラストに付けていたオチは今回の作品にはありません。
さらに、空を飛ぶシーンでは、ただ飛ばすだけでは面白くないと思い、何らかの演出を加えたいと考えて、最終的にあのような形に仕上げました。
参加者A:
山里さんの作品は常に幻想的というか、光が多いという印象を持っています。
山里:
前回の Animation Runs! Vol.66(2024年)に出品した『響想詩「光の響影 二」』と、今回の作品をご覧いただいているのだと思いますが、どちらもたまたま光や細長い糸のような表現が出てきます。実は光を扱うのが好きで、アイデアに行き詰まるとつい「光」を使ってしまうんです。そういうこともあって、光の表現を採用するケースは多いのだと思います。
参加者B:
音楽も相まって、真っ暗な世界の中で光の線をまといながら優雅に飛んでいく感じが印象的でした。また、前半で同じ動きを繰り返しながら階段を上り続けていく場面では、時間が進んでいるようでもあり、止まっているようでもあり……その曖昧さが強い孤独感を生んでいたと思います。時間が進んでいるのか進んでいないのか分からないような感覚や、どこか死後の世界を思わせる雰囲気もありました。そして全体としては、手塚治虫の『火の鳥』を連想させるような世界観も感じました。虚無感とは少し違うのですが、そうした印象が心に残りました。
山里:
いろいろ感じてくださって 本当にありがとうございます。僕はもともとその孤独なやつで、なかなかちょっと人付き合いが上手じゃないんで、いつも一人で寂しく暮らしてるんですが、おそらくそういうところが出てるんだろうなと思います。それから 手塚先生の『火の鳥』の話ですが、僕はどちらかというと『科学忍者隊ガッチャマン』の「科学忍法・火の鳥」のほうをイメージしてました。
参加者C:
無数の線で描かれた鳥というモチーフでしたが、やはりその「線」自体がとても美しいと感じました。映画全体の構成については正直よくわからないのですが、線の動きそのものが表現となり、ある種の概念を表現していると思いました。線を眺めていて、思わず嫉妬してしまうほどの魅力を感じました。音響については、もしもっと激しく音をつければ、ディズニーの『ファンタジア』のような雰囲気になるのかもしれません。でも、あえてそこまでやらないことで、線そのものが浮かび上がり、観る側の意識が線に集中できる。そうした点がとても好きでした。
山里:
ありがとうございます。ゴージャスな音楽にできない、そしてゴージャスな映像にできないのは、ひとえに僕の能力のなさと資金のなさゆえです。申し訳ありません。その中で「線の美しさ」を感じ取っていただけたこと、本当に嬉しく思います。僕はアニメーションを作っていますので、その“動きそのもの”を美しいと感じていただけたことに、心から感謝申し上げます。
参加者D:
「右肩上がり」なのがとても印象に残りました。右肩上がりといえば、良い意味で使われることも多いと思いますが、一方でそこに一種の刹那的な感覚を強く感じていて、それが一体何なのだろうと考えながら観ていました。本当に美しい作品で、いつまでも見ていたいと思えるような作品でした。
山里:
ありがとうございます。右肩上がりの件についてですが、画面の作り方では一応タロットカードの見方を意識しています。タロットでは右側が未来、左側が過去を意味します。そして、上は神聖、下は邪悪というイメージです。ですから「未来へ進む」という意味で右側へ、さらに「より神聖な方向へ飛んでいきたい」という思いを込めて右上がりに構成しています。
Axi(s)Rhythm:
あの鳥の造形についてですが、今回の作品では声楽、つまりボーカルが加わっています。鳥にメタモルフォーゼしてからの羽の揺れは、ボーカルの声の揺れと呼応しているようにも感じられました。
また、ピアノについては羽ばたきそのもののリズムやテンポを表現しているように思います。さらに造形そのものがサインカーブ、つまり正弦波に見えるんですね。羽の揺れが正弦波で、胴体部分はそのグラフの横軸――すなわち時間を表しているようにも思えました。少し変な深読みかもしれませんが、そう感じました。
山里:
おっしゃる通り、羽の動きそのものはサインカーブで動かしています。ですので、あの光の線の形もサインカーブの動きになっています。ただ、羽は途中で関節が曲がっている部分があり、前と後ろで若干違うので、完全なサインカーブではないんですが。
また、胴体部分、つまり真ん中は波打っていないのでまっすぐになっています。いまご指摘いただいたことで、その真ん中の部分が横軸になり、そこにサインカーブが重なっているのだと気づきました。
〔2025年7月27日(日)オンラインミーティング より〕
【文責:Axi(s)Rhythm】
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